不妊・妊婦の豆知識
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排卵・子宮頸部・卵管にまつわるトラブル
精子と卵子が出会うまでのルートにも、妊娠を左右するポイントが!
複数の卵胞がある程度育っているのに排卵できない状態の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、超音波検査で卵巣内に多数の卵胞が詰まって見えるのが特徴。肥満や血糖値が高めの人に多いとされています。
処方箋●飲み薬のクロミフェン、フェマーラ(保険適用外)や、注射のFSHなどの排卵誘発剤を使って排卵を促します。コントロールが困難な場合は、体外受精のほうが近道の可能性もあります。
妊娠中や授乳中に分泌するプロラクチンというホルモンが、排卵を妨げることが。このホルモン値が高いと高プロラクチン血症となり、抗うつ剤・胃薬などの薬剤が影響するケースも。
処方箋●数値や状況によって、プロラクチン値を下げる薬で治療します。数値が少し高くても排卵がちゃんとあれば、投薬はせずに、しばらく様子を見ることが多いです。
卵管采がうまく働かず、排卵した卵子を卵管にとり込めないことをピックアップ障害といいます。クラミジアや子宮内膜症などが原因で、卵管采に癒着があって起こっているケースも。ピックアップ障害を調べる検査はありません。
処方箋●癒着は状況によりますが、手術でとり除くことは可能。しかし、癒着が不妊原因かどうかの断定はむずかしく、体外受精が有効とされます。
卵管の一部が完全に詰まった卵管閉塞は、精子や卵子、受精卵が通ることができません。卵管の先端(卵管采)が炎症や癒着を起こし、水やうみがたまる卵管水腫はピックアップ障害の原因にもなります。
処方箋●卵管閉塞は、卵管形成術で開通させる治療や体外受精を。卵管水腫は受精卵の着床も妨げるので、移植の前に穿刺し排液するか手術で卵管をとる場合もあります。
子宮内膜が本来あるべき場所以外で増殖してしまう子宮内膜症は、強い月経痛や性交痛があることも。また、卵巣に血液がたまってチョコレート嚢胞ができたり、癒着を引き起こして不妊の原因になることがあります。
処方箋●癒着がひどい場合は、増殖した内膜をとり除く手術をすることも。チョコレート嚢胞は、ホルモン療法や手術による治療を行ないます。
女性の体が精子を異物とみなして、自分の体に抗精子抗体をつくってしまうトラブル。頸管粘液や卵管液の抗精子抗体に精子がブロックされて通過できなくなったり、受精を妨げることも。
処方箋●有効な治療法がないため、抗精子抗体の影響が少ない体外受精や顕微授精を考えたほうがいいでしょう。人工授精での妊娠もまれにあります。
膣内に放出された精子は、膣と子宮をつなぐ子宮頸管を粘液の波に乗って泳ぎ、子宮へ向かいます。排卵時期に頸管粘液の分泌がふえますが、分泌量が少ないと精子が前に進みにくくなります。クロミフェンの副作用で減ることが。
処方箋●排卵誘発剤のクロミフェンの服用で頸管粘液の分泌が減っている場合は、頸管粘液の影響がない人工授精と組み合わせた治療を行います。
卵管の一部に癒着があって狭くなり、卵子や受精卵が通りにくくなっている場合があり、これを卵管狭窄といいます。子宮内膜症やクラミジア感染症で起こるほか、先天的な卵管の形状異常という場合もあります。
処方箋●卵管の状態は子宮卵管造影検査で確認します。検査をすることで卵管の通りがよくなるケースもありますが、効果がない場合は体外受精が選択肢になります。
受精・着床にまつわるトラブル
これらのトラブルは検査ではわからないことが多く、原因不明のケースも、まさに妊娠は生命の神秘!
卵子と精子をいっしょにしても受精できないことを受精障害といいます。受精障害かどうかを検査する方法はなく、体外受精をして、はじめてわかります。体外受精では10~20%、顕微授精でも2~3%の割合で見られます。
処方箋●体外受精で受精しない場合は、顕微授精に切りかえます。顕微授精でも受精しない場合は、薬剤などで刺激を与えて卵子活性化を図り、受精を促すこともあります。
受精卵は、2分割、4分割と細胞分裂しながら成長しますが、その途中で染色体異常の細胞がふえたり、本来あらわれるべき特定の遺伝子が出てこないため、成長が止まってしまうことがあります。
処方箋●染色体異常の治療法は、今のところありません。加齢とともに染色体異常が起こる頻度が高くなるので、早めの妊活が大事です。
子宮にできる良性のこぶである子宮筋腫は、筋腫が発生した位置や大きさによっては、着床の妨げになることが。また、子宮内膜にポリープがあると受精卵が着床しにくくなる可能性があります。
処方箋●子宮筋腫やポリープが不妊の原因と考えられる場合には、筋腫やポリープを手術で切除することがあります。妊娠希望であることを伝えたうえでの治療が必要です。
排卵すると卵巣から出る黄体ホルモンによって子宮内膜が厚くなり、着床の準備をととのえます。このホルモン分泌の不足を黄体機能不全といいます。
処方箋●子宮内膜が厚くならない場合には、黄体ホルモンを補充する薬を処方します。飲み薬、注射、膣剤などがあります。
子宮がある骨盤内の血流が悪いと、子宮に十分な栄養を届けることができません。そのため、受精卵が着床しにくい、着床してもその後に流産しやすいといわれています。喫煙は血流を妨げる要因のひとつです。
処方箋●血流を悪くする要因はさまざまです。喫煙している人は禁煙を。冷え性ならば、適度な運動、入浴、冷えない服装、冷えにくい環境などを心がけましょう。
WHOの調査では、不妊カップルの11%が原因不明です。「原因不明=妊娠できない」というわけではなく、現在の検査・治療では解明できない原因があるのかもしれません、たまたま妊娠しないのかも。原因不明のカップルが体外受精で妊娠する例はよくあります。
妊活スタイルや治療は人それぞれなので慎重に
妊活で大事なポイントを押さえつつ、治療へのステップアップの時期は人それぞれなので、慎重に進めます。不妊期間や年齢、治療状況などを踏まえて、最短の妊娠をめざして夫婦とドクターで相談しましょう。
妊活で押えておきたい3ポイント
女性は加齢とともに妊娠しにくくなります。子どもを望んで1年以上たつなら、まずは検査を受けてみましょう(女性も男性も!)。もしそこで原因が見つかれば早めに治療を始められ、妊娠への近道になります。
睡眠不足や不規則な生活、過度なダイエットなどは、妊娠に関するホルモンバランスを乱す原因に。栄養バランスを考えた食事や適度な運動など。赤ちゃんを授かるために健康的な生活を心がけましょう。
妊活の第一歩はセックス。排卵日にこだわらずできるだけ機会を持ち、妊娠の可能性を高めましょう。また、妊活の目的は赤ちゃんを授かり、出産し、育てていくこと。治療方針や将来について夫婦で話し合うことも大事。
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