肥満と不妊
妊娠・出産のためには健康な体づくりが大切です。自分のためにも、赤ちゃんのためにも今日からできる体質改善、始めましょう!
標準より20%肥満で不妊のリスクは2倍に
BMIの基準からみると、18.5以下は「痩せ」、18.5~25は「適正」。25以上は「肥満」となっています。BMIが22くらいだと健康状態がよく、妊娠にも理想的だといわれています。
肥満と妊娠の関係は、標準体重より20%体重過多の場合、不妊症のリスクが2倍になるというデータも報告されています。一番の問題は、排卵障害です。肥満女性の約半数に、無月経、排卵遅延、黄体機能不全などの月経異常を認めると言われています。特に高度肥満の場合は、無排卵となる可能性が高くなります。
排卵障害の原因の一つは、肥大した脂肪細胞から産生される過剰なエストロゲンにより、下垂体性ホルモンなど排卵に関与するホルモンの分泌に異常をきたすこと。他に、脂肪細胞由来のタンパクの異常が卵巣自体に影響し、排卵を起こしにくくさせるという報告もあります。さらに、インスリンなどの内分泌代謝異常を起こしやすくもなるなど、排卵障害の原因は多方面にわたってきます。
たとえ排卵が正常であったとしても、着床率が低下するなど、排卵障害以外にも肥満が妊娠に悪影響を及ぼすというデータが報告されています。
また肥満の状態で妊娠すると母体へのリスクが非常に高まります。体重が多ければ多いほど、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの合併症も増えるので、やはり妊娠前から理想体重に近づける努力をしてほしいですね。
よく「不妊治療をしてホルモン剤を使うと太る」という声を聞きますが、これは一時的なものです。自然の月経周期でも黄体期には体は水を溜めようと働くので、むくんだり、食欲が増すことがあります。でも、黄体期が終わってしまえば元に戻る。ホルモン剤を飲んでいる時も同様です。太ってしまうというのは、食欲にまかせて、その後も同じように過食を続けているからではないでしょうか。
妊娠を望むなら、体重管理は必要です。BMI値が25以上の方がいきなり10Kg減の目標は厳しいので、まずは.5~10%の減量を目指すのが理想でしょう。
体重が70Kg なら、まずは3.5Kg減らすなどで、健康に近づき、心血管障害や糖尿病のリスクを低下させるうえで有効だといわれています。
もちろん、妊娠にもいい影響があると思いますよ。
BMIを調べてみよう!
肥満と不妊の関係(海外の学会データ、文献より)
○妊娠率が低下
排卵が順調でもBMI35以上だと正常な女性に比べて26%妊娠しにくい。(※1)
○体外受精の治療への影響
肥満にともなって正常受精卵の数は減少、HCG投与日のエストラジオールレベルは低下し、妊娠率および生児出産率の低下が認められた、IVFを受ける不妊症患者において、治療期間中は正常体重を維持することがすすめられる。(※2)
○移植のキャンセル率への影響
BMI40以上の病的肥満女性においてのIVFのキャンセル率は優位に上昇が見られる。(※3)
○出生率が低下
顕微授精を受けたカップルにおいて、肥満男性のカップルにおける生児出産の割合は、正常BMIの男性カップルよりも84%低下するという結果が得られた。(※4)
★ご主人の肥満にも注意!
[出典元]
※1 Human Repro. 2007 Dec
※2 Obstet Gynecol. 2011 Jul
※3 Obstet Gynecol. 2006 Jul
※4 Fertil Steril. 2012 Nov