不妊・妊婦の豆知識
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知っているようで、実は知らないことがたくさんある「卵子」。 そもそも卵子でどうやって出来ているの? 個人差はあるの? など、分からないこともたくさんあると思います。 今回は、そのような誤解や勘違いをスッキリ解消する「卵子の基本知識パート3」をお伝えします。 まずは卵子の老化 基礎チェック!卵巣機能の状態は、経年による細胞の老化とホルモン値が目安卵子の老化は、特別なことのように思われるかもしれませんが、単純にひとつの細胞の老化と捉えてみてください。細胞の中にはいろいろな器官が詰まっていて、代表的なものではミトコンドリアの存在を知っている人は多いでしょう。ミトコンドリアは細胞の活動に必要なエネルギーを生産しますが、加齢とともに数が減少し、細胞の機能を低下させるため、年齢を重ねることが卵子の老化につながります。年齢だけで見ると、20代の卵子は美しい円形ですが、30代~40代はいびつな形が多く見られます。とはいえ、同じ年令の人がすべて同じレベルというわけではありません。 20代でも卵巣年齢が高く、機能が低下している人もいます。40代の人が30代の卵巣年齢の場合もあります。 また、卵巣機能の低下には、ストレスも大きく関わっているという考え方もあります。ストレスを強く感じることで、脳下垂体からのホルモン分泌異常が起こり、卵巣内のホルモンバランスが崩れます。月経不順も同じ理由でストレスが原因になる場合が多いようです。 わかりやすい例としては、アスリート無月経が挙げられます。 女性アスリートは肉体的に過度のストレスを感じ続けている状態で有り、それが原因でプロラクチンが多量に分泌されます。プロラクチンは乳汁分泌ホルモンであり、分泌量が高いと妊娠していると身体が錯覚することから、無月経になります。 精神的ストレスも同様で、例えば職場の人間関係や友達関係などで、さまざまな精神的ストレスを感じると、LHやFSHなど性腺刺激ホルモンの分泌を促す性腺刺激ホルモンGnRHが減少し、卵巣機能が低下します。 年齢が高くなるほど、排卵のメカニズムにも細やかな対処が必要脳下垂体からLHが分泌されると、卵子は減数分裂を起こし、それと同時に卵胞壁が炎症を起こしたような状態で張ってきます。張ってもろくなった卵胞壁が破れて、中から卵子が飛び出す事を「排卵」といいます。しかし、年齢の高い患者さんの中には、排卵時にすでに排卵してしまっているというケースが多々あります。 アンタゴニストを使ってLHの分泌を抑えているはずなのに、もともとの卵胞壁がもろいため破れてしまっている、というケースです。 そのケースの可能性がある場合、痛み止めの座薬を使う事があります。卵胞壁は炎症を起こした状態で張ってくるので、炎症反応を抑えながら排卵をコントロールするという理屈です。 健康体で正常な卵巣機能の人が排卵の頃に痛み止めを使うと、逆の現象が起きます。 壁面がしっかりしたまま炎症反応も抑えられているため破れず、排卵せずにそのまま黄体期に入ってしまうのです。 この辺は、個々の状態を見極めて、細やかな対応が必要です。 [参考文献] Jineko 2015winter |