不妊・妊婦の豆知識
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知っているようで、実は知らないことがたくさんある「卵子」。 そもそも卵子でどうやって出来ているの? 個人差はあるの? など、分からないこともたくさんあると思います。 今回は、そのような誤解や勘違いをスッキリ解消する「卵子の基本知識パート2」をお伝えします。 卵子の質は遺伝子で決まり、卵巣年齢は生活習慣の影響も卵子の質は、もって生まれた遺伝子によって個人差があります。質が良ければ子どもができるということになりますが、実際は普通に排卵していて、精子にも問題がないのに不妊に悩まされているカップルは7,8組に1組の割合でいます。 遺伝子をもう少し説明すると、例えば早発閉経の人は1回の排卵で自然消滅する卵子の数が多く、通常よりも早く閉経してしまいます。 男性の場合は無精子症を例に出すと、胎児のごく初期の段階で精子をつくる遺伝子に以上がおこり、無精子症になると考えられています。 いずれも遺伝子の突然変異で、原因はわかっていません。個々の質にしても、遺伝子の情報は個人によって違いますし、遺伝子がどのようにコントロールされているか分からないのが現状です。 また、卵子の質と排卵障害は一緒に考えられがちですが、これはまったく別物です。 排卵傷害は卵ができない、排卵しない、成長しないということ。質は悪くても排卵する人もいれば、うまく排卵できない人もいます。 基礎体温が二相性で月経も順調だけど質が悪い人もいます。 それを証明するのは、自然の状態では難しいでしょう。ただし、月経不順や基礎体温が二相性にならない場合は卵巣機能の低下が疑われます。 食生活が影響する場合もありますし、急激なダイエットによる痩せすぎも危険です。 規則的な食生活と適度な運動を心がけるなど、日常生活を見直すことが直接的に卵子の質に結びつくわけではありませんが、卵巣機能の老化を少しでも遅くしたり、維持したりするには、自分自身を若く美しく保とうと心がけることも効果的でしょう。 AMHの数値に惑わされず、月経3日目の胞状卵胞をチェック原始卵胞は2ヶ月ぐらいかけて成熟しますが、その初期の段階では脳下垂体からの影響を受けません。自らの力で大きくなり、一定に達すると脳からのホルモンに反応して成長し、排卵します。原始卵胞は、どういう状況下におかれていても、ある程度の数は残っていますが、健康的な生活をしていなかったり、脳の動きが悪かったりするとホルモンが不足して、最初は順調に育っていた第一次・第二次原始卵胞が胞状卵胞に変わるときに発育が止まります。それが卵巣機能不全による排卵障害です。 脳下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)が卵巣に働き、胞状卵胞に顆粒膜細胞からエストロゲンが分泌されます。卵胞が成長するとエストラジオール(E2)の数値が高くなり、卵胞はさらに成熟して大きくなります。そしてネガティブ・フィードバックという減少によってLHという黄体形成ホルモンが分泌され、排卵が誘発されます。 顆粒膜細胞から分泌されたホルモンは体中をめぐり、肝臓などいろいろなところを通って血液にたどり着きます。卵巣の予備能をAMHの数値で判断するのは一般的ですが、AMHは胞状卵胞の顆粒膜細胞から分泌されるホルモンです。AMH値もまた体内を巡り巡ってようやくたどり着いた血液中の数値ですから、絶対ではないと理解して頂けるでしょう。 卵巣予備能の正確な診断は、AMHの数値だけでなく、月経3日目の左右卵巣内にある胞状卵胞の数と大きさと位置を調べることが不可欠です。その時期の胞状卵胞は5mmかそれ以上の大きさですが、超音波では2mmから観測できます。AMH値が低くても、胞状卵胞が確認できさえすれば排卵誘発が行えます。AMHの数値が低いと、すべて悪いように受け止められる傾向にありますが、例えば1個でも質の良い胞状卵胞があれば妊娠の可能性はあるわけですから、そこを間違っては行けません。 生殖医療は今なお分野を超えた様々な側面からのアプローチで研究が進んでいます。 今後さらに大きく変化を遂げることが期待でき、一つひとつ新たに解明される事が不妊に悩むカップルの手助けに繋がるでしょう。 [参考文献] Jineko 2015winter |