不妊・妊婦の豆知識
[Vol.155] <<<次の記事 前の記事>>> バックナンバーはこちら |
授かるためには、その仕組みや働きを知ることも大事です。
3回に分けて、その概要をみなさんに分かりやすくお伝えしています。
最終回の今回は、子宮のトラブル「子宮内膜症」と卵巣のトラブル「卵巣嚢腫」についてです。
子宮内膜症
子宮内膜が癒着して授かりにくい原因に
月経のときに体外に排出されるべき子宮内膜がなんらかの原因で腹腔内や卵巣、卵管などで増殖するトラブル。発生する場所で最も多いのは卵巣(チョコレート嚢胞)で、そのほか、卵管やダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)など。子宮や卵巣以外の臓器に発生することもまれですがあります。場所によって、月経痛、腰まわりが痛い、排便痛など、違和感や痛みの感じ方に違いがあります。
子宮内膜症の原因ははっきりわかっていませんが、月経中に剥がれ落ちた子宮内膜の一部が体外へ出ず、逆流して別の場所に移動し、子宮内膜細胞が増殖するのではないかと言われています。自覚症状は「痛み」がメイン。子宮内膜以外の部位にできるので、月経量の多さ自覚症状に入りません。
不妊治療をしている場合は手術を視野に
子宮内膜症が不妊の原因になることは多いと言われています。ピルなどで月経を止めることで女性ホルモンの分泌を抑えて、その間に病巣を小さくすることが改善策です。しかし不妊治療をしている間は排卵を止めることはできないので、病巣が大きくなったり、症状が悪化した場合は、腹腔鏡での手術が選択肢のひとつに。
しかし、チョコレート嚢胞の場合は、手術をすると卵巣機能に影響が出ることがあります。再発もしやすく、何度も手術をすると卵巣へのダメージが大きくなるので、チョコレート嚢胞の対処は慎重に行います。
子宮内膜炎
細菌が子宮内膜へ侵入。急性と慢性があります。
子宮内へ細菌が入り込んで子宮内膜に炎症が発生。急性は痛みがあり、ドロっとしたおりものやにおいなどが自覚症状。慢性は症状がないことが多く、不妊治療の検査で判明するケースがあります。急性は自然に治ることもありますが、症状が強い場合は慢性と同じく抗生剤を投与します。
子宮腺筋症
子宮の筋層内で子宮内膜が増殖する
子宮内膜に似た組織が子宮内の筋層内にできる病気のこと。また子宮筋のトラブルといえば子宮筋腫がありますが、子宮筋の中に明らかなこぶ状のものができる子宮筋腫とは違って、病変と子宮筋の境界がはっきりしないものが子宮筋症です。
子宮嚢腫
自覚症状がなく気付かないうちに進行
卵巣は病気になっても自覚症状があらわれにくい臓器。卵巣がんにいたっては「サイレントキラー」と呼ばれ、早期発見がむずかしい病気とされています。
卵巣嚢腫は良性の腫瘍で、袋状の卵巣に何かしらの内容物が詰まった腫瘍のこと。大きく分けて「漿液性」「粘膜性」「皮様性」の3種類に分類されます。
卵巣嚢腫は無自覚ですが、大きくなってくると卵巣腫瘍のつけ根部分がねじれたり、嚢腫自体が破裂したりすることで、激しい痛みにおそわれます。今まではいていたパンツやスカートがきつくなることで気付くケースもあり、そのころになるとかなりの大きさになっています。大きくなった卵巣が固定されず動いてしまうので、卵管采が卵子をピックアップしづらくなり、それが妊娠を妨げる原因にもなります。
大きなものや皮様性は手術で取り除くことも
卵巣嚢腫には効果的な薬がありません。再発しやすい皮様性嚢腫の場合や、ねじれる可能性がある大きな嚢腫は手術(腹腔鏡手術)の可能性が高く、再発しにくい漿液性嚢腫や粘液性嚢腫は、小さいものであれば特に処置はせず、そのまま妊娠にトライすることもあります。
しかし、卵巣嚢腫の術後に卵巣機能が低下することもあると学会で報告されているのも事実で、妊娠を望むのであれば、卵巣という臓器の扱いは慎重に行わなければなりません。
腹腔鏡を用いた体に負担の少ない方法
腹部に2,3箇所穴を開け、腹腔鏡を腹腔内に入れて、卵管や卵巣、子宮などの状態をモニターに映し出し確認。モニターを身ながら行う手術で、入院して全身麻酔で行います。