不妊・妊婦の豆知識
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妊活を始めたら、積極的に摂るべき栄養素のひとつとして知られる「葉酸」。 先天性疾患のリスクを下げるため。これまでは”妊娠初期”に特に重要とされてきましたが、研究が進むにつれ”妊娠中”の摂取も大切と判明。さらに、マルチビタミンと一緒の摂取でその働きは高まるとのこと。 前回に引き続き、この葉酸について掘り下げて考えてみましょう。 安定期までは胎児の問題、それを過ぎたらママの責任妊娠12週までの流産は、胎児に染色体異常があることなどが原因で、防ぎようがありません。逆に、12週以降まで無事に育った胎児には、生きる力があるということ。よく「安定期に入る」という言い方をしますが、実は大きな間違いで、そこからは胎児の力ではなく、母親の生活習慣が大きく関わるのです。 特に気を付けてほしいのが栄養面で、流産・早産・胎児発育不全、常位胎盤早期剥離といった胎盤に関連する妊娠合併症は、葉酸の欠乏による胎盤の形成不全が原因で起こると報告されています。 150万例の統計から見ると、葉酸が十分な場合では早産率は0.70倍、死産率は0.70倍、死産率は0.75倍、新生児死亡率も0.77倍と有意に減少しています。 また、葉酸単体ではなく、他のビタミンB群やビタミンA、Eといったマルチビタミンを一緒に摂取した場合では、さらに有意な数値が示されました。葉酸を体内に取り入れるためには特定の酵素が必要なのですが、その酵素の働きをマルチビタミンが高めてくれるためと思われます。欧米人に比べてアジア人は酵素の遺伝子変異率が高く、この酵素が少ないとも考えられます。それゆえに、葉酸はもとより、葉酸の働きを高めるマルチビタミンの同時摂取がより効果的と考えるに至りました。 妊娠中も「葉酸」が必要な理由胎盤に関連する妊娠合併症のなかでも、常位胎盤早期剥離は、発症数はそれほど多くないものの、胎児だけでなく母体の命をも脅かす重篤な疾患です。妊婦が35歳以上の高齢の場合に発生しやすいとされるほか、慢性的な高血圧や糖尿病などの持病があったり、妊娠高血圧症候群、肥満の場合も高リスクとされています。さらに、低葉酸栄養も、常位胎盤早期剥離発生のリスク因子のひとつであることがわかってきました。母体の葉酸不足が、深く関わっているのです。 妊娠前から妊娠初期での積極的な摂取が推奨されている葉酸ですが、妊娠中、出産後の健康維持としても、摂取を心がけたほうがいいでしょう。 すべてのリスクを回避できるわけではありませんが、葉酸とマルチビタミンの摂取を週間づけることをおすすめします。 葉酸はアジア人で特に不足しやすく、またビタミンB群は水溶性のため排泄されやすいことなどを考えると、サプリメントなどを利用して毎日摂取する必要があると言えるでしょう。 米国やカナダのように食品への葉酸添加が義務付けられていねいのですから、個人の意識において、不足しがちな栄養素を補うように心がけてください。 きちんとした食生活を実践している方でも、妊娠を希望される方や妊娠中は特に、サプリメントの利用を検討するべきではないでしょうか。 [参考文献] Jineko 2017 Summer |