不妊・妊婦の豆知識
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「着床の窓」(Implantation Window) という言葉を耳にしたことはありますか? 今回はその「着床の窓」について気を付けておくべきこと、知っておくべきことのお話です。 「着床の窓」とはどんなもの?自然の妊娠では、受精後5日ほどで受精卵は子宮に達し、7日目には子宮内膜に潜り込んで根を張っていきます。体外受精の場合、受精卵を子宮に戻したとしても、残念ながら着床しやすい時期とそうでない時期があり、この着床に最も適した時期のことを「着床の窓(Implantation Window)」と表現しているのです。 もともとマウスを使った動物実験で観察された現象で、具体的に何かが開いて受精卵を受け入れやすくなるというようなものではありません。 「着床の窓」が開く期間を知ることはできるの?一般的に、卵胞ホルモンの作用によって子宮内膜が育つ段階で、排卵後のある一時期の2~3日間が着床に最も適した状態「着床の窓」と考えられています。経験的には排卵後、だいたい4,5日後ぐらいなのですが、人によっては多少の前後もあり、現状でそれを正確に確認する方法はありません。ただ、排卵を境に、黄体ホルモン(P)の値が上がり始めますので、それが一つのサインとなっていて、Pの値がある一定の値を超えると「着床の窓」は閉じると言われています。ですから排卵日のPの値を参考にして移植するかどうかを決めているようです。 Pが6ng/ml 以上であれば、基本的にはその周期の移植は見送られます。移植をしても着床の見込みが少ないので、受精卵を凍結保存しておき、別の周期に移植を行うのです。そうすることによって着床率がアップし、妊娠の可能性を高められます。 高齢のために窓の開く期間が短くなることはあるの?海外の卵子提供の方の実例を見てみると、かなり高齢の方の出産例もあります。ドナーによる卵子提供の場合、30代~40代の方の妊娠率は、基本的にほとんど変わりません。極端な例ですが、ホルモン環境さえ整えば、60代での代理出産も可能です。 子宮側に筋腫などの問題がなく、ホルモンの状況さえ整っていれば、高齢だからといって「着床の窓」が開く期間が極端に短くなるとは考えにくいでしょう。 不妊治療に通う患者さんの過半数は40歳を超えていて、40代の方の治療をどのように進めていくかは今後の大きな課題となっています。 体外受精は受精卵が出来るまでの期間を、比較的確実にサポートできる、不妊治療の中で最もロスが少ない治療です。ただその先の着床のメカニズムには、いまだ解明されていないことが多いというのが実情なのです。
「着床の窓」は年齢に相関せず、 排卵期のPの値が大きな指標に。 [参考文献] Jineko 2016Autumn |