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不妊・妊婦の豆知識

[Vol.23]
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不妊治療に使われる薬の基礎知識

【不妊で使われる主な薬】
 不妊に使われる薬には、排卵誘発剤やホルモン機能を高める薬、経口タイプから注射まで、さまざまな種類があります。そのなかでも、よく使われている薬の用途と副作用を紹介しましょう。自分の体の中に入る薬について正しい知識を持つことは大変重要です。処方された薬を漠然と使用するのではなく、どういった目的で使い、体の中でどのように作用するのか、そしてどんおような副作用があるのかを理解した上で使用してください。
◆排卵誘発剤
 排卵誘発剤とは、排卵(卵子を排出すること)を誘発するというよりも、卵胞(卵子が入った袋状のもの)を育てる薬といえます。卵胞が育ち、排卵しなければ妊娠はできません。
排卵誘発剤には、以下のようなものがあります。

【シクロフェニル製剤】
 脳の視床下部または脳下垂体という部分に働きかけ、その結果として、脳下垂体からの卵胞ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)の分泌を促す経口の排卵誘発剤です。作用が弱いため、膣と子宮をつなぐ子宮頚管から分泌される子宮頚管粘液の減少や子宮内膜への影響も殆どありません。
商品名は「セキソビット」。

【クエン酸クロミフェン製剤】
 シクロフェニル製剤と同じ経口の排卵誘発剤で、視床下部のエストロゲンの受容体に作用し、その結果として、脳下垂体からの卵胞刺激ホルモンや黄体化ホルモンの分泌を促します。通常は月経5日目から5日間服用します。副作用として、子宮頚管粘液の減少、子宮内膜が厚くならない、などがあげられます。
商品名は「クロミッド」「セロフェン」「フェミロン」など。

【hMG製剤(ヒト閉経ゴナドトロピン】
 卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンから構成され、卵巣を刺激して卵胞の発育・成熟を促す排卵誘発剤です。閉経後の女性の尿から精製されます。駐車による摂取であり、作用は経口タイプに比べて強力になります。副作用として、卵巣が刺激されて腫れる「卵巣過剰刺激症候群」(OHSS)があげられます。
商品名は「ヒュメゴン」「パーゴナル」「パーゴグリーン」「テイゾー」「ゴナドリール」「日研hMG」「フェリング」など。

【FSH製剤】
 成分を卵胞刺激ホルモンのみとする排卵誘発剤です。閉経後の女性の尿から精製される「ヒト閉経後尿由来FSH製剤」と遺伝子組み換え(リコンビナント)技術によって作られる「リコンビナントFSH製剤」とがあります。hMG製剤同様、作用は強力であり、副作用として、卵巣過剰刺激症候群があげられます。
商品名は「フェルティノームP」「フォリルモンP」「フォリスチム」など。

【hCG製剤(ヒト絨毛性ゴナドトロン)】
 妊娠時に子宮内に形成される「胎盤」から抽出された性腺刺激ホルモンで、妊娠を維持していく働き(黄体機能賦活)や成熟した卵胞を排卵させる働き(排卵誘発)があります。卵胞がある程度の大きさまで育ち、卵胞ホルモンのひとつであるエストラジオール(E2)が卵胞1個につき200~250pg/ml になった時点で、hCG製剤を5000~1万単位注射すると、24~36時間後に排卵が起こります。副作用として、卵巣過剰刺激症候群があげられます。
商品名は「HCG」「プロファシー」「ゴナドトロピン」など。


◆排卵抑制剤
 排卵誘発剤に対して、排卵を抑制するための薬もあります。採卵(卵子を採取すること)のときに、卵胞を十分に成熟させるためです。

【GnRHアゴニスト製剤】
 脳下垂体から分泌されるゴナドトロピンというホルモンを抑制するための薬です。点鼻薬(鼻の粘液につける薬)となっており、1回のスプレーで約8時間効果が持続するため、1日数回の使用が必要です。体外受精などで長時間使用する場合は、黄体化ホルモンの分泌を抑えて排卵を防ぎ、短期使用の場合は、排卵を促す作用があります。副作用として、ほてり、頭痛、肩こり、嘔吐、膣の乾燥などがあげられます。
商品名は「スプレキュア」「ブセレキュア」「ナサニール」「リュープリン(注射)」など。

【GnRHアンタゴニスト製剤】
 GnRHアゴニスト製剤と同じく、ゴナドトロピンの分泌を抑制するための薬です。1回の注射で約24時間効果が持続し、排卵直前に黄体化ホルモンが大量に分泌される「LHサージ」を抑えることで排卵を防ぎます。
商品名は「セトロタイド」。


◆黄体ホルモン・卵胞ホルモン剤
妊娠に重要な役割を果たす黄体化ホルモン=プロゲステロン(P4)と卵胞ホルモン(エストロゲン)を補充する薬です。

【黄体ホルモン剤】
黄体機能不全に使用される薬で、着床を促し、子宮内膜を熱くする作用があります。卵胞ホルモン剤と組み合わせて、カウフマン療法にも使われています。種類は経口薬と注射。副作用として、むくみ、頭痛、吐き気、乳房の痛み・張り、めまい、不正出血などがあげられます。
商品名は「デュファストン」「ルトラール」「ヒスロン」「プロゲストン」など。

【卵胞ホルモン剤】
卵胞から分泌されるホルモン剤で、子宮内膜を厚くし、子宮頚管粘液を増やす作用があります。黄体ホルモン剤と組み合わせてカウフマン療法にも使われています。種類は経口薬、貼り薬、塗り薬。副作用として、不正出血、おりもの、乳房の痛み・張り、血栓(血管内に血液の固まりが出来ること)、頭痛、めまい、動悸などがあげられます。
商品名は「プレマリン」「エストラーダム」「エストラーナ」「ジュリナ」など。

【黄体ホルモン・卵胞ホルモン混合剤】
黄体ホルモンと卵胞ホルモンを混合したホルモン剤です。「ピル」とも呼ばれ、着床(受精卵が子宮内膜に定着すること)を促す作用のほかにも、排卵を抑えて月経周期を変更させる場合などにも使用されています。副作用として、吐き気、乳房の痛み・張り、不正出血、血栓、眠気などがあげられます。
商品名は「プラノバール」「ソフィアA」「ソフィアC」「ノルアテンD」など。
◆高プロラクチン血症薬
 脳下垂体から分泌されるプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)を抑える薬です。このホルモンの分泌が多いと、排卵がおこりにくく、黄体機能不全につながる恐れがあります。

【ブロモクリプチン】
 プロラクチンの分泌を押え、高プロラクチンが原因の排卵障害や無月経、下垂体腫瘍のほか、パーキンソン病の症状改善にも使用されます。副作用として、吐き気、食欲不振、便秘、眠気、めまいなどがあげられます。
商品名は「パーロデル」「パルキゾン」「パロラクチン」など。

【テルグリド】
 高プロラクチンが原因の排卵障害や乳汁漏出症、脳下垂体腫瘍などに使用されます。副作用として、吐き気、頭痛、動悸、食欲不振、便秘などがあります。
商品名は「テルロン」。

【カベルゴリン】
 高プロラクチンが原因の乳汁漏出症、排卵障害、下垂体腫瘍などに使用されます。パーキンソン病による体の震えやこわばりを改善することにも使用します。副作用として、吐き気、食欲不振、便秘、下痢、憔悴感、ふらつき、肝機能障害などがあげられます。
商品名は「カバサール」。
 

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