不妊・妊婦の豆知識
[Vol.103] <<<次の記事 前の記事>>> バックナンバーはこちら |
ウソなのか、ホントなのか、医師の立場から解説致します。
生理予定日くらいに着床出血があるといわれますが、必ず起こるものでしょうか?また、生理前と妊娠の兆候が似ているというのもよく聞きます。私は予定日1週間くらい前(排卵から1週間くらい)に下腹部が重い感じになるのですが、それはただの生理前の兆候でしょうか?(M.Kさん 29歳)
自己判断はNG
妊娠初期の出血が妊娠陽性を示すサインとして「着床出血」という言葉は、私もよく聞きますし、妊娠初期に出血症状があることも観察されています。しかし医学的に「着床出血」という用語は使いません。それが着床によるものかどうかわかっていないからです。何を着床出血というかの定義も、実はありません。
妊娠初期の場合、絨毛(トロホブラスト)がつくられる過程で出血が起きる可能性は十分考えられます。
一方、生理予定日くらいの出血は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)といった女性ホルモンの変動が原因かもしれないと推測できます。つまり、出血は妊娠したから必ずあるものではなく、着床の目安として自己判断するのは好ましいとはいえません。
次に、生理前の似た症状についてですが、排卵後1週間くらいの高温期に、PMS(月経前症候群)による下腹部の張り、不眠、イライラなどの症状が感じられる人は少なくありませんが、これも黄体ホルモンが作用しているなど様々な要因が考えられるので、妊娠している・していないと判断できるものではないでしょう。
妊娠初期に不正出血があった場合、ポリープやその他の器質的な異常、異常妊娠の可能性も考えられます。ただ、妊娠初期の出血が必ずしも流産につながるわけではないこともお伝えしておきます。アメリカで行われた研究で、妊娠初期(8週頃)の女性151人にインタビューしたところ、14人(9%)が出血を経験、うち12人は出産に至っていたという論文があります。不正出血があった場合は慌てずに医療機関に相談し、必要に応じて検査を受けてください。
Jineko 2017 Spring