不妊・妊婦の豆知識
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難しい用語がいろいろと出てくる生殖医療用語。 よく聞く言葉だけど、あまり正確に知らないものも多いのでは? 勘違いや思い込みを防ぐためにもしっかり確認しておきましょう。 今回はそのパート1で、3つほど簡単に紹介させて頂きます。 卵管閉塞卵管采でキャッチされた卵子が精子と出会う場所が卵管です。ここで受精が行われ、卵割を繰り返しながら子宮へ向かって移動していきます。 生殖にとって大切な場である卵管が、卵管炎や子宮内膜症などで炎症が進行し、卵管の内側で癒着やひきつれが生じて、一部分がふさがった状態を卵管閉塞といいます。精子や卵子がうまく通れないため、不妊の原因となります。 卵管炎のおもな原因はクラミジア、淋菌、大腸菌などの病原微生物の感染で、多くは性行為によるものです。初期の段階ではあまり症状がないため、未治療のまま炎症が進行してしまった、あるいは繰り返し感染した場合などに癒着が生じるのです。 また、炎症による滲出物が溜まった袋状のもの(卵管留水腫)も卵管を詰まらせます。 カテーテルを卵管内に入れ中の癒着を取り除きます。(卵管鏡下卵管形成術)。閉塞部位や癒着の程度と年齢により、卵管切除や形成術をすることもあります。 子宮内膜症何らかの原因により子宮内膜様組織が子宮内腔内面以外(異所性)に生じた疾患で、子宮周囲(卵巣、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)、腹膜など)に発症するものが多く、20~40歳代に好発します。女性ホルモンの影響を受けるため、年月とともに病変は広がり、下腹部痛や腰痛などの症状が強くなります。子宮内膜症では、剥離した組織や血液を排出する出口がないため、卵巣や腹腔内にとどまり、時間とともにその量は増えていきます。これが周囲の組織に悪さをし、臓器同士の癒着や腹膜と臓器の癒着をおこします。骨盤内で生じるため不妊症の原因になります。 治療法には、GnRHアナログ、低用量ピル、ジエノゲスト、ダナゾールによる薬物療法と手術療法があります。腹腔鏡下手術で病変部を取り除く方法もありますが、完治は難しく再発の可能性があります。 卵巣に発症するチョコレート嚢胞は悪性化の可能性があり、卵巣がんの合併が嚢胞径10cm以上や40歳以上で高くなるため、これらの症例では手術も考慮する必要があります。 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)のバランスが崩れ、慢性的に男性ホルモンが過剰となり、うまく排卵できない状態です。男性ホルモンが高いため、ニキビや多毛といった男性化徴候がみられます。また、月経周期位が長い・不規則、無月経になるなどの月経異常があります。 血液検査では男性ホルモンの高値を示し、FSHの基礎値が正常にも関わらずLHが高くなります。 超音波検査では、卵巣に数珠状につながった多数の小卵胞を認めます。 原因はいまだ不明ですが、視床下部・下垂体、卵巣、副腎皮質の機能障害、インスリンの機能低下などが関わるとされています。 治療はクロミフェンなどの排卵誘発剤で排卵を促します。効果が無い場合は腹腔鏡を用いてレーザーで厚くなった卵巣の表面に数箇所小さな穴を開ける方法(腹腔鏡下卵巣多孔術)が行われます。また、インスリンの機能低下の場合には、糖尿病治療薬のメトホルミンを投与します。 |