不妊・妊婦の豆知識
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顕微授精は顕微鏡下で卵子の細胞に精子を注入する治療法今回は、顕微授精についてご説明していきましょう。顕微授精は1980年代から行われている治療法で、顕微鏡下でピペットと呼ばれる細いガラス管で精子を吸い取り、卵子に精子を直接注入して受精させる方法です。 卵子の透明帯に穴を開けて。精子が入りやすくする透明帯開孔術(PZD)や、卵子の透明帯と細胞質の間に精子を注入する(SUZI)などがありますが、現在行われているほとんどは、卵子の細胞質に直接精子を注入する卵細胞質内精子注入法(ICSI)とされています。 顕微授精の適応となるのは、顕微授精以外の方法では妊娠の成立が見込めないケースです。学会では「男性不妊や受精障害など、本法以外での治療においては妊娠の可能性がないか、極めて低いと判断される夫婦」が対象となると定めており。具体的には以下のような場合が適用になります。 顕微受精の適応●精子の状態が良くない方精子の数が少ない、精子濃度が低い、運動率が悪い、奇形率が高いなど、精子側に受精しにくい原因がある場合。総運送精子数が100万個以下の場合は重症の男性不妊症と考え、顕微授精の適応になる。また、無精子症の方で。精巣上体から精子が採取できた場合、顕微授精を行うことになる。 ●体外受精で受精がうまくいかなかった方 過去に行った体外受精で受精しなかった、あるいは受精率が低くてうまくいかなかった方も顕微授精の対象となる。また、抗精子抗体がある方も適応となることがある。 ●その他 前述のケースに当てはまらないものの、受精の確実性を上げる目的で次のような場合にも顕微授精を行うことがある。 ・採卵できた卵子の数が少ない場合 ・女性の年齢が高い場合 ・凍結保存した精子を用いる場合など 体外受精と顕微授精の詳細な妊娠率の比較データはありませんが、精子を確実に卵子の細胞質の中に入れることで、より受精がしやすくなることはあるのではないかと思われます。 現在、顕微授精によって生まれた赤ちゃんは年間数千人といわれております。 |